竹内 薫 / 「『ファインマン物理学』を読む 量子学と相対論を中心として

今日いつも巡回している書店の物理関連書籍を眺めていたら、「『ファインマン物理学』を読む!」と言う直感的なタイトルの本が置いてあったので眺めてみる。著者はNatureから出ている本の翻訳をされているサイエンスライターの竹内氏の新しい本。「『ネイチャー』を英語で読みこなす」という本も面白くて結局買っちゃった経緯があるので眺めてみたわけだが…

リチャード・ファインマンの「ファインマン物理学」という本は世間一般の評価では「教科書」と言うことになっていると思うのだが、僕はファインマンという飛び抜けた才能を持った物理学者の頭の中身をかいま見せてくれる非常に優れた「講義録」と理解している。とにかく面白いのである。我が家の書棚にも元物理を志しただけあって、全5巻がそろっている。学生時代に熟読したのは第3巻の「電磁気学」なのであるが、電磁気学を熟読したのは恐ろしいほど電磁気学を必要としていたためで、理解のイメージも欲しかったのと、非常にこなれた説明で分かり易かったと言うことがあるからかもしれない。

ただ全5巻そろっているわけだが、僕自身は最終巻の第5巻「量子力学」にはほとんど手を付けていない。内容は何度か眺めているのだが、学生の頃の感想は_非常に理解しにくい_と言うことだけであった。ただファインマンの主要な業績は電磁量子力学であって、_量子力学こそ本領_のはずである。よく考えると古典力学も相対論も電磁気学も非常に分かり易く説明するファインマンが、量子力学だけ失敗するようなことはあり得ないのである。(分かり易くと言っても、それなりに難しいですよ。計算できてその計算の意味が理解できなければ。)

この本は_いきなりその「量子力学」から読み解こう!という面白い視点の本である。じゃぁ読んでみようと思って買ってきたわけであるが、やっぱり面白い。で、この本をパラパラ眺めて理解したのは、ファインマンの「量子力学」と同じ感想を持っている朝永振一郎の「量子力学」も読みづらくて正解だなと思ったのである。両者に共通して言えるのは、「行列力学」のなりたちから_話を進めていると言う点である。

通常学部における量子力学の教育はよっぽどのことがない限り、シュレーディンガーの波動方程式からスタート(前期量子論の種々の実験なども入るかもしれないが)で、代表的な系の波動方程式の解法に進んで、たいがいの人は1次元調和振動子の解法もしくは水素原子の計算で脱落していくわけであるが…(前者は場の量子論で必要な議論だからやっておく意味はあるけども、後者は僕は計算の複雑さから考えてもあまりやる意味を感じない。いずれにしても履修時に特殊関数をほとんど学んでいないのだから、脱落するわなぁ。)

僕は工学部の出身なので量子力学はそれ自身を研究する学問ではなくて、ツールとして使いこなす必要のあるものであったため、計算できて実験の結果とあえば良いというもの以上の何物でもないのであるが、果たしてそれだけで良いのだろうかと言うところはある。まぁ学生時代にもそれはいかんと思って、朝永先生やファインマン先生の本を読んでいたのだが、実際問題そこにある問題を解けることの方が重要で、どうしても理解したいという意気込みより研究を進めたいという方が優先されてしまった感はある。(そんなわけで量子力学は途中までしか勉強してなくて中途半端な状態。実際は古典統計力学の範囲で計算できる系を扱っていたので。)

今回この本を眺めて、上記の2冊の本を再読しようと思い至ったわけである。今はそんなに即物的な立場にはないので、勉強の前提条件も異なり_自由になった_といえるかもしれない。そういう目で見れば非常に面白い本だと再認識したので、じっくりファインマンの本を楽しめる用になったのではないかと思う。しみじみこういう本が出てありがたいのである。

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